休職中、暗い小説『グロテスク(著・桐野夏生)』にハマった理由

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時間がたくさんある休職中こそ読書がオススメ!

休職中、時間だけはあったけれど、心は晴れずに沈んでいました。
そんな時期に手に取ったのが、桐野夏生の『グロテスク』。

私が尊敬する有名人で、「感性が豊かな人だな」「賢くて教養がある人だな」と憧れる人たちが、この『グロテスク』をオススメしているのをよく目にしたからです。

しかしみんな口を揃えて、

衝撃・・・すごく重たくて、なんともいえない気持ちになる

かえってそれが、「どういう気持ち?!」と私の中で興味が芽生えたのです。

休職中で毎日一人で家にいる、だからどんな物語にもすんなり入ってるし、

邪魔するものが何も無い、好きなだけ読める。

早速私はこの作品に手を伸ばしましたが、没頭して丸2日かけてずっと没頭し、

読み終わるころにはこの小説の関連動画をよく探して視て、

しばらく私もなんともいえない気持ちになり、この物語から抜け出せませんでした。

重たいけど気になる、もっとこれについて考えたい・・・

なぜあのタイミングで、この作品にハマったのか。

今振り返って考えてみます。

女性の生きづらさを描いた桐野夏生『グロテスク』あらすじ

本題に入る前に、この桐野夏生の『グロテスク』、ザっとあらすじをご紹介しますね。

名門女子校に通う姉妹と同級生たちが織りなす、歪んだ人間模様を描いた長編小説。ユリコは、絶世の美貌を持ちながらも家庭の崩壊や学校での孤立を経て、売春婦となり悲劇的な最期を迎える。もう一人の同級生・和恵もまたエリートの道を歩みながら、社会の中で自分を見失い、やがて転落していく。彼女たちの姿を通して、女性同士の嫉妬や承認欲求、学歴社会の残酷さが冷徹に描かれる。物語は殺人事件の記録や証言、手記が交錯する構成で進み、誰もが「社会に適応しようともがく」姿をあぶり出していく。華やかな表面の裏に潜む人間の欲望と絶望をえぐり出した、桐野夏生の代表作の一つ。

上下で2冊あるのですが、あまりにも展開が気になり過ぎて、決して「長い」とは感じなかったです。

毎日時間はいくらでもあるのに、寝る時間を惜しんで一気に読んでしまったこの一冊。

どうして私がこんなにハマったのか、ハマった理由を改めてお伝えします!

ハマった理由① 「生きづらさ」にシンクロした

『グロテスク』は、名門校に通う女性たちが社会の中で競争し、挫折し、疎外されていく物語。
「落ちこぼれたらどうなるのか」「居場所を失ったらどう生きるのか」という視点が、休職中の私の心境と重なりました。
社会から少し外れただけで、こんなにも孤独を感じるものなんだ──そうした実感と小説がリンクしていたのだと思います。

作中描かれる登場人物たちの、次々に襲ってくる絶望的な気持ちや、人間関係に悩む姿。

普段なら「引っ張られる」と表現するところですが、

休職中の私はそんな心配皆無。だって、自分が既にそこにいる。

誰もが抱える『生きづらさ』を対等な目線で見ることができ、

小説の中の誰かが寄り添ってくれてるかのような、不思議な気持ちでした。


ハマった理由② 女性の嫌な部分を見て学ぶ

自分も含め、休職に至った人というのは、優しいから『意地悪な人間にしてやられる』ってありがちですよね。
しかし優しいから、意地悪をする人間の気持ちが解らない。

これが残念なんです。

きっと、傷つきやすい自分が悪いんだ・・・

そう思ってしまいがちですが、本を通じて意地悪な人間の心理を知ると、

意地悪で見栄っ張りな人間たちが自分では到底口にしないような、ひた隠しにしている弱さやズルさを知ると、「嫌だ、怖い」と思っていたあの人のことを「可哀想な人」という一歩引いた目線で見れるようにもなります。


休職中になり、自分を責める気持ちや周りへの恨みのような感情は、こういった物語を読むことで、登場人物を通じて色々考えさせられ、自分の気持ちが多少整理できるでしょう。

もちろん、本は読めば読むほど、思考のバリエーションや切り口も増えますし、

自分一人で考えても『ちょうどいい言葉が見つからない』というときは、本のレビューを読み漁ってみてください。

探してた言葉、この本に出出会った意味が見つかるかもしれませんね。


ハマった理由③ 醜悪さの中に潜む「美」

『グロテスク』は決して明るい小説ではありません。
むしろドロドロした人間模様が続きます。


でもその中に、著者独特の文学的な美学があるんです。
「人間の苦しみや醜さにすら意味があるのかもしれない」と思わせてくれる感覚は、暗い時期を生き抜くための支えになりました。

上記でもお伝えしたように、

むしろこういった闇に目を向けて、徹底的に考えたほうがいい。

意味を深く考えてるうちに、「怖い」とか「嫌だ」という感情も消え、考えることそのものが「勉強」になってくる。

そして、酷いことや絶望的なことを読書で疑似体験をすると、私たちは決まってこう思うのではないでしょうか?

私の辛さも、強い気持ちと工夫で、どのようにか乗り越えれるかもしれない。

そんな風に感じることができたら、辛い沼から片足抜け出したようなものです。

そう。見えないけど復活までの大きな一歩を進んだと言えるでしょう。


ハマった理由④ 展開が飽きずに没頭できるエンタメ性

現実が辛い時ほど、強烈な小説に没頭できるもの。
桐野夏生の筆致は容赦なく、読み出すと止まらない。
その没入感が、一時的に現実を忘れさせてくれました。

そして、それがただの物語ではなく、現実を元にしたお話なのです。

『東京OL殺人事件』という名目で、

主人公の住まいから容姿から言動から・・・

命が尽きるその日まで、何があったのかに迫る動画や映画。

主人公がどんな思いでいたのか、深く知りたくなり、調べたくなる。

中毒性があり、私も2週間くらいは、この『グロテスク』が頭から離れなかったです。


まとめ

休職中に『グロテスク』にハマったのは、単に小説が面白かったからではなく、
私の「生きづらさ」「感情の渦」「出口のない孤独感」に、作品が見事に寄り添ってくれたから。


暗い物語なのに、不思議と救われる──そんな読書体験でした。

もし同じように休職中で気持ちが沈んでいるなら、
あえて自分の心に近い“重たい小説”を読むのも一つの方法かもしれません。

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